君へ。
「どうなん?」

藤本サンはアタシの顔を覗き込みながら聞く。


『…あっ、えーっと』
アタシはたじたじしながら言おうかどうか迷っていた。


どうしよう……言ってしまおうか。藤本サンなら安心だし、もちろん誰とは言わないけど。



「…おるんやろ?」
藤本サンは今度は真剣な表情で話しかけて来るから、つい言ってしまった。


『あー…ハイ』
アタシは藤本サンから目をそらしながら頷いた。





だから




気付かなかった。





あなたの





今にも泣きそうな







悲しげな目に。
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