ディアパゾン−世界に響く神の歌−
胸の中でまた鮮明によみがえりそうになる過去の思いをなんとか抑えながら、アナは意味のない笑みで小さくウーダンに相槌をうつ。
「それでな、アナちゃん。
悪いが明日君の叔父さんを借りてくから」
話の締めくくりにそう言ったので、アナはまた武具の修理の依頼なのかと思い確認すると、ウーダンは「いいや。」と頭をふる。
「道案内を頼んだんだ。
このあたりの山なら、地元の人間が一番詳しいだろうと思ってさ」
「道案内?」
アナは訝しげに声を落とした。――こんな辺境の地に道の案内を頼むほどの何の用があるというのか。
「この世界を救う話なんだぜ」
冗談めかして言う声を聞きながら、アナはますます顔をこわばらせる。
昔習った神様の話を思い返し、ウーダンの『世界を救う神様』という言葉に心はざわついた。
この世界が救われるなどという事があるのだろうか。
神は世界を捨てた。だからこの世の全ては徐々に力を失って、まるでゆっくりと死にゆくようだ。
アナはこの世界に住んでいる誰もが、こんな世界にした神を憎んでいるような気がした。
ウーダンの言葉の明るさとは裏腹に、険しい顔をしたアナに、
「俺はよくわからないんだけどな。皇弟のダリル殿下が新しい神様を見つけて下さるってよ。新しい神様は、この世界を救ってくれるんだそうだ。
そのための『手がかり』を、俺は見つけに来たんだ。
────ここだけの話、それは前の神様の落し物らしいんだけどよ。
今の技術じゃ到底作れないような神秘の代物らしい。
見つかったら褒賞ものだ。
そしたらアナちゃんに求婚しようかな」
最後のほうは誰が聞いても冗談としか思えないような調子で付け加え、ウーダンはまた叔父に睨まれていた。
ウーダンはわざとらしく肩をすくめた後、アナの頭に大きな手を置いて、慰めるようにクシャリと頭をなでた。
子供のころに父にそうされた時のようだとアナは懐かしい気持ちになって、さっきの不思議な女性に見た父の面影を思い出した。
「それでな、アナちゃん。
悪いが明日君の叔父さんを借りてくから」
話の締めくくりにそう言ったので、アナはまた武具の修理の依頼なのかと思い確認すると、ウーダンは「いいや。」と頭をふる。
「道案内を頼んだんだ。
このあたりの山なら、地元の人間が一番詳しいだろうと思ってさ」
「道案内?」
アナは訝しげに声を落とした。――こんな辺境の地に道の案内を頼むほどの何の用があるというのか。
「この世界を救う話なんだぜ」
冗談めかして言う声を聞きながら、アナはますます顔をこわばらせる。
昔習った神様の話を思い返し、ウーダンの『世界を救う神様』という言葉に心はざわついた。
この世界が救われるなどという事があるのだろうか。
神は世界を捨てた。だからこの世の全ては徐々に力を失って、まるでゆっくりと死にゆくようだ。
アナはこの世界に住んでいる誰もが、こんな世界にした神を憎んでいるような気がした。
ウーダンの言葉の明るさとは裏腹に、険しい顔をしたアナに、
「俺はよくわからないんだけどな。皇弟のダリル殿下が新しい神様を見つけて下さるってよ。新しい神様は、この世界を救ってくれるんだそうだ。
そのための『手がかり』を、俺は見つけに来たんだ。
────ここだけの話、それは前の神様の落し物らしいんだけどよ。
今の技術じゃ到底作れないような神秘の代物らしい。
見つかったら褒賞ものだ。
そしたらアナちゃんに求婚しようかな」
最後のほうは誰が聞いても冗談としか思えないような調子で付け加え、ウーダンはまた叔父に睨まれていた。
ウーダンはわざとらしく肩をすくめた後、アナの頭に大きな手を置いて、慰めるようにクシャリと頭をなでた。
子供のころに父にそうされた時のようだとアナは懐かしい気持ちになって、さっきの不思議な女性に見た父の面影を思い出した。