ディアパゾン−世界に響く神の歌−


結局、ジュカイのような小さな山村に泊まれるような宿はなく、ウーダンは以前アナが両親と住んでいた空き家に泊まることになった。
住む人がいなくなって五年も経つのに手放すこともできず、ついつい掃除に行ってしまっていたのが、思わぬところで役に立った。


一緒に食事をとるのだとばかり思っていたウーダンは、情報を集めるからとあっさり出て行ってしまい、いつも通りのはずが、気まずい雰囲気で叔父と二人きりの食卓に着いた。

いつにも増して不機嫌そうな叔父の様子に、アナは今日仕事を放り出したことをそんなにも怒っているのかと、戦々恐々としていた。
しかし、ほどなくして重苦しい沈黙に耐えられずアナから口を開いた。

「今日は、本当にごめんなさい。叔父さん。

──あの、友達がね、結婚することが決まって…なんだか自分でもよくわからないんだけど、ちょっと落ち込んじゃって。
だからって、仕事をおろそかにしていいわけじゃないのは、ちゃんとわかってるから」

何とか挽回したいと焦るアナの言葉に、叔父は黙ったままだ。

品数の少ない食卓はあっという間に片付いてしまって、アナは気まずいまま叔父のために食後のお茶を入れる。
台所に立って叔父に背を向けたところで少し息をついたアナは、もうひとつ、話さなければならない大事なこと――昼間拾った美しい破片のことを考えていた。


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