ディアパゾン−世界に響く神の歌−
叔父が何を言いたいのか理解できず、アナはただ叔父の普段見せない剣幕にたじろぐ。

「あの、叔父さん、あたし…」

「アナ、明日私達が出かけてる間に、どこか遠くにそれを捨ててくるんだ。
遠く、誰にも見つからないようなところに」

叔父はアナをするどく見据えたまま、はっきりと諭すように言った。
その言葉が意味することを理解しようとすると、アナはますます混乱してしまう。

「どうして?世界を救えるものなんじゃないの?
ダリル様って次の皇帝
になられるお方が──」

「あの男はだめだ!」

今度の怒号は…一瞬、アナの思考を完全に止めた。

叔父の目に宿るのは…怒り…いや、もはや憎しみ。それも深く、強い恨みのように暗い闇。

こんな形相の叔父は、今まで見たことがない。まるで別人になってしまったようで、アナはにわかに身震いがするのを止められなかった。

「あいつが…ダリルが…

神など、そんなものを見つけ出してなにをしようというのか。

アナ、落ち着いて聞け。
お前の父親を、私の兄を殺したのは、ダリル・サン・トガチ。

その、ダリル殿下だ」


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