ディアパゾン−世界に響く神の歌−
叔父の声の震えで、彼もひどく動揺しているのがわかった。
叔父は無闇にこんな話をする人ではない。
いい加減な噂話や大げさな物言いを何より嫌う人間だ。
それは長く暮らしてきたアナが誰より知っていること。
それでもアナはにわかに受け入れがたい話に問わずにいられなかった。
「ダ、ダリル様が、お父さんを殺したって…
なんで?
父さんはこの国を守る兵士でしょう?
ダリル様とは味方同士でしょう?」
アナはどんどん弱まる自分の声が、まるで自分の声でないように感じた。
叔父はようやくアナから視線を逸らし、ゆっくりと語り始めた。
「…五年前、兄さんがモルガに沈んでいくところを、私は見たんだ。
皇帝の盾になるように、全身血まみれで、あの男と対峙していた…
後ろ姿だが、間違いない、ダリル、あの男だ」
「だ、だけどそんな…」
「あの傷は、アシェントラの片刃の剣の傷じゃなかった。
間違いなくアルゴールの両刃の剣で刺し貫かれた傷だ。
それに、兄さんが握っていた首飾りは…死ぬ間際に自分を刺した相手から引きちぎったんだろうな。
あれは、皇弟ダリルのものだった。
私が納めたばかりの物だった。
見間違えはしない」
アナは、机の上で握りしめた叔父の拳が、話しながらずっと小刻みに震えているのを、うつろに見ていた。
叔父が話し終えてしばしの沈黙ののち、アナは握りしめていた欠片を手のひらでそっと撫でた。部屋の明かりの中でさえ、美しく七色に輝いていた。
それをそっとポケットに戻し、服の上から押さえる。それは硬い感触だったけれど、やはり不思議と暖かい。その暖かさがアナの心を優しくなでてくれる…。
叔父は無闇にこんな話をする人ではない。
いい加減な噂話や大げさな物言いを何より嫌う人間だ。
それは長く暮らしてきたアナが誰より知っていること。
それでもアナはにわかに受け入れがたい話に問わずにいられなかった。
「ダ、ダリル様が、お父さんを殺したって…
なんで?
父さんはこの国を守る兵士でしょう?
ダリル様とは味方同士でしょう?」
アナはどんどん弱まる自分の声が、まるで自分の声でないように感じた。
叔父はようやくアナから視線を逸らし、ゆっくりと語り始めた。
「…五年前、兄さんがモルガに沈んでいくところを、私は見たんだ。
皇帝の盾になるように、全身血まみれで、あの男と対峙していた…
後ろ姿だが、間違いない、ダリル、あの男だ」
「だ、だけどそんな…」
「あの傷は、アシェントラの片刃の剣の傷じゃなかった。
間違いなくアルゴールの両刃の剣で刺し貫かれた傷だ。
それに、兄さんが握っていた首飾りは…死ぬ間際に自分を刺した相手から引きちぎったんだろうな。
あれは、皇弟ダリルのものだった。
私が納めたばかりの物だった。
見間違えはしない」
アナは、机の上で握りしめた叔父の拳が、話しながらずっと小刻みに震えているのを、うつろに見ていた。
叔父が話し終えてしばしの沈黙ののち、アナは握りしめていた欠片を手のひらでそっと撫でた。部屋の明かりの中でさえ、美しく七色に輝いていた。
それをそっとポケットに戻し、服の上から押さえる。それは硬い感触だったけれど、やはり不思議と暖かい。その暖かさがアナの心を優しくなでてくれる…。