ディアパゾン−世界に響く神の歌−
アナは急いで、玄関に足を向ける。
しかし、物事はアナの思う通りには行かないらしく、アナが鞄を背負い直した時に、戸を叩く音がした。
叔父が返事をする前に、もうその戸は開かれていた。遠慮がないのは声の大きさだけではなかったようで、ウーダンは悪びれる様子もなく、
「朝早くからすまんなっ。村じゃ何の情報もなくってよ。探すにゃ時間がかかりそうだと思って、早起きしちまった」
とやはりよく通る大きな声で、威勢良く言った。
驚いて目を丸くしているアナに気づいたウーダンは、挨拶をする隙も与えずにしゃべりかけてきた。
「おっ。今日はどっかお出かけかい?大荷物だな」
アナは内心の動揺を何とか抑えて、
「おはようございます。街まで品物を届けに行くんです」
と答えた。
早く出発してしまいたくて、アナが叔父に行ってきますと言おうとして、またウーダンの声に遮られた。
「感心だねぇ。働き者のいい娘さんだ。本当に俺のとこに嫁に来ないか?これでもそれなりに名前が知れてるんだぜ?」
相変わらず大きな声で、アナの目を覗き込むように言うウーダンの真意が読めず、アナはうろたえた。
昨日の親友の話がまたよみがえり、どうしようもなく不安をかき立てられる。
思わず叔父の方を振り返ると、ウーダンが同じタイミングで、
「なぁ、考えてくれないか?」
と叔父に投げかけたので、アナはさっきまでとは違う動悸を感じていた。
親のいないアナにとって、将来を決める権利を持っているのは叔父だ。叔父が諾と言えば決まってしまう。
まさかアナの気持ちも聞かないまま返事をするような叔父ではないが――なんと答えるのか心配するアナをよそに、叔父の返事は驚くほど早かった。
しかし、物事はアナの思う通りには行かないらしく、アナが鞄を背負い直した時に、戸を叩く音がした。
叔父が返事をする前に、もうその戸は開かれていた。遠慮がないのは声の大きさだけではなかったようで、ウーダンは悪びれる様子もなく、
「朝早くからすまんなっ。村じゃ何の情報もなくってよ。探すにゃ時間がかかりそうだと思って、早起きしちまった」
とやはりよく通る大きな声で、威勢良く言った。
驚いて目を丸くしているアナに気づいたウーダンは、挨拶をする隙も与えずにしゃべりかけてきた。
「おっ。今日はどっかお出かけかい?大荷物だな」
アナは内心の動揺を何とか抑えて、
「おはようございます。街まで品物を届けに行くんです」
と答えた。
早く出発してしまいたくて、アナが叔父に行ってきますと言おうとして、またウーダンの声に遮られた。
「感心だねぇ。働き者のいい娘さんだ。本当に俺のとこに嫁に来ないか?これでもそれなりに名前が知れてるんだぜ?」
相変わらず大きな声で、アナの目を覗き込むように言うウーダンの真意が読めず、アナはうろたえた。
昨日の親友の話がまたよみがえり、どうしようもなく不安をかき立てられる。
思わず叔父の方を振り返ると、ウーダンが同じタイミングで、
「なぁ、考えてくれないか?」
と叔父に投げかけたので、アナはさっきまでとは違う動悸を感じていた。
親のいないアナにとって、将来を決める権利を持っているのは叔父だ。叔父が諾と言えば決まってしまう。
まさかアナの気持ちも聞かないまま返事をするような叔父ではないが――なんと答えるのか心配するアナをよそに、叔父の返事は驚くほど早かった。