ディアパゾン−世界に響く神の歌−
男たちは戸口に立っているシュエラの姿を確認すると、その中の一人の年配の男が一歩前に進み出てきた。
同道していた二人の男も、今にも爆発しそうな怒りをたぎらせたまま黙り込み、あたりは水を打ったように静かになった。
「シュエラ。今回の地震、村はひどい損害だ。
お前の声を聞いたという者がおるが、どうなんだ」
おそらく村の顔役なのだろう男の声は、落ち着いてはいるが隠しきれない怒気が滲んでいるように聞こえた。
アナの目の前にあるシュエラの背が怯えるようにビクリと揺れた。
『間違いありません』
シュエラがしゃべった途端に、後ろの二人が動揺したのがわかった。
一瞬、シュエラの『声』が発せられたのかと思ったのだろう。実際には発せられてないことを認識した後も、二人は怒りの中におののきを隠せずにいた。
それほどにこの村の人々にとってシュエラの『声』が忌むべきモノであることを、嫌でもアナは察してしまった。
動揺を振り切るように男達の怒りが噴出し、シュエラに怒号を浴びる。
「ふざけるな!」
「また怪我人が何人も出たんだぞ!死人がでたらどうするんだ!」
それを押さえながら、さっきの男が言葉を続けた。
「お前の災いを起こす力は、十年前のときから強くなっているようだ。
もうお前の師匠もおらん。ここに住み続ける理由もないだろうが。
悪いが、もうこの村に住み続けることを許しておける状態じゃない」
最終宣告のように告げられる言葉に、シュエラの背は小さく震え続けている。