なな恋
「どうせ触るなら
こっち向きのが淋しくないでしょ?」
突然の動きに私が少し驚いていると
それに、
と私の首もとに顔を寄せて
「いつも真由ばっかり触ってるんだからたまには俺にも触らせてよ。」
囁かれた言葉と
髪をすく無骨な指。
なんとなく気恥ずかしい
不慣れな感覚と
私の目を捕らえて離さない
鋭く光りながらも儚く潤んだ両眼が
いとも簡単に私の中の温度を上げていく。
今私の耳はもちろん顔まで真っ赤だろう。
わかってていつもわざと
私を恥ずかしがらせる啓。
真っ黒な黒い啓の瞳は
その中に囚われてしまいそうで。
差し伸べられた手をとってしまったら
彼の手を離せなくなってしまいそうで。
はまってしまいそうな自分が怖い。