なな恋
さっき髪をさわりすぎてしまったからかすねたのか
啓の指は焦らすように髪の毛を弄び、時々耳をかすめていく。
こうなったらもう
啓はあたしの欲しいものはくれない。
あたしがねだるまでは。
『啓ぃ―キスして。』
「俺の髪が好きなんじゃなかったの?」
ほらまた意地悪な顔。
だんだんあたしが一番好きな顔になってく。
『啓の髪の毛が好き。
微笑んだ顔も好き。
意地悪な顔も好き。』
でもね
って啓の首に腕を回して
顔を寄せて
啓だから
ぜんぶ、ぜんぶ
啓だから好き。
啓の耳元で最後の一言を
言い終わる前に
背中に柔らかなベッドの
感触を感じていた。
目の前にあるのは
あたしが一番大好きな
照れたような満足そうな
啓のオトコノコの顔。