blood heaven
言ってすぐ、僕は後悔した。
僕は確かに死んだ。
実感はあったのに、弱い僕自身の心がその事実を否定しているだけ。     
「記憶と感情が消えるとき、魂は消滅する。すなわち、真実の死は、これから訪れるということ。・・・・・・気をつけろ。」
小さく発せられた最後の一言だけがうまく聞き取れなかったが、それまでの言葉で大体の状況は理解できた。
僕は・・・僕の魂は、まだ死んでない。

どこかで諦めかけてた思いが、今は不思議なくらい強く、戦うための糧となっている。
ずっと怖かったんだ。
自分がもう人でないことを認めてしまうのが・・・。
もう、僕たちのことを一人、二人と数える者はいない。
一つ、二つと数えられる度、何かに貫かれるような痛みを感じてた。
絶望の縁で、僕はずっと待ってたんだ。
「生きてる。」と、ただその一言を。
「・・・出来るかな。僕にも。」
呟いた。
「また人間として、・・・生きられるかな・・・?」
彼女は無言で、緑の髪をなびかせていたが、その表情は、先ほどより少し和らいでいるように見えて、僕はここに来て一番の笑みを見せた。
(頑張るね・・・。)
声には出さず、頭の中だけでそう一言呟き、同時に、戦う決意を決めた。
再び僕を包む閃光。
戻るんだ。今にも血に濡れてしまいそうな、あの薄っぺらい楽園へ。


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