日蔭にゆれる羽


キヨの背中には翼がある。

嘘だと思うだろうが、実際に白い羽が生えている。空を飛ぶことだってできる。

小さいころは飛べずに、ただ翼をはためかせるだけだったが、キヨがおばさんの背に追いつくころには、自由に飛べるようになった。

生まれたとき、キヨは普通の人間と同じで翼なんてなかった。それなのに生まれて何日かたつと、鳥の羽に似たものが生えた。

それは木が育つのに似ていた。小さな芽がでて、葉をたくさん茂らせ、大きく成長する。

キヨの翼は今だに成長を続けている。背が伸びると翼もまた大きくなるのだ。

その背にある翼が原因か、幼いときキヨは山に捨てられた。

幸い、キヨを拾ってくれた山に住む菊恵おばさんは、天使が私のもとに来てくれたと喜んで可愛がってくれた。

キヨは自分が天使だとは思っていない。突然変異の類だと思っているが結局のところ、背中の羽がなぜ生えるかはわからない。だから、あまり考えないようにしている。悲観的に歎くのも違うような気がするし今は、おばさんと一緒に暮らせて幸せだからいい。
そう思っていた。



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