日蔭にゆれる羽

菊恵おばさんは、ふたりの間にはいり静かに言った。白髪混じりの黒髪を複雑に編んだおばさんの後頭部を見ながら、キヨは言い難い安堵に肩の力が抜けた。

「どういったことでしょうか。キヨ、喉を見せなさい」

振り返ったおばさんの額にえくぼがはっきりとついているのを確認した。有無を言わせない冴えた眼光が不気味に光った。

おばさん、怒らないで。

声にして言えたかどうかはわからなかったが、あぁどうか伝わってと息ができない苦しさの中で思った。

全身をおおっていた翼以外の羽毛が抜けていき、キヨの視界は雪のように散る羽でいっぱいになった。それなのにすべてが黒ずんでいく。

キヨは意識を手放した。




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