日蔭にゆれる羽
最近、素敵な野原を見つけた。平坦ではないけど広いさら地で、山の頂上に近く家からも近い。

なんで今まで見つけられなかったんだと、自分に腹がたった。もっと前に見つけていたら、家の屋根から飛ぶなんていう荒業をしなくてすんだのに。

家のまわりは木々が多く茂っていて(山の中なんだから仕方ないことだけど)翼が枝に引っかかったり、風の動きが読みづらかったり、飛ぶのにかなりに不向きな場所だった。

それに比べ野原は崖つきで、走って一気に飛んで行ける最高の場所だ。このために、野原と崖があるようなものだ。

突風の日と豪雨の日は除いて、毎日野原に通った。おばさんとの約束で一日一時間だけの飛行を楽しんだ。本当はもっとたくさん飛びたかったけど仕方ない。おばさんが自分のことのように、悲しげにお願いしてきたんだから。それに、キヨ自身のためのことでもある。人間に飛んでいるところを見られたら大事だ。

いつものように生い茂る木々の上を低空飛行していると、仲良しの鴉のコーヒー(おばさんが好んで飲むコーヒー豆の色に羽の色が似ているから、コーヒーと名前をつけた、本人は喜んでいるよ)が話しかけてきた。

「ガーガーガッ」

コーヒーと仲良くなって三年くらいたつけど今だに、なんて言っているか正確には理解できない。声の調子からすると多分、面白いものがあるから一緒に見に行こうといったところだろうか。キヨはそれらしくコーヒーに鳴いてみせた。

「ガー」

うん、いいよ。

言いたいことは伝わったようで、コーヒーは右に大きく旋回した。後を追って風をきり、濃い緑の上を少しの間飛ぶと、目的の場所に着いたらしく、コーヒーは杉の木の枝にとまった。キヨは細い枝にとまるわけにはいかず、その場に羽ばたいて空中にとどまった。

ここになにかあるんだろうか。コーヒーの視線の先をたどると、川があった。この辺りには、川が多くあり珍しいものではない。

じっと目を懲らした。

川の中に光るものがあった。太陽の光に反射する水ではなくて、もっと強く輝くなにか。

なんだろう?羽ばたくのも限界で、好奇心にかられて河原に下りた。いつものことだけど、飛んでから地面に立つと体がものすごく重く感じる。ただでさえも重いのに、肩にコーヒーがとまった。
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