日蔭にゆれる羽
「ぼくは手相占いをしてって言ってるんじゃないよ。ぼくの手に手を重ねてみて」
「はっ?」
キヨは少年の手と顔を交互に見て、訝しがりながらそっと手を重ねた。
「びっくりしないでね」
そう言って面白そうに眉を上げた。面白い顔ではあったけど笑えなくて、眉間にシワをよせる。意味がわからないことが多過ぎて、腹が立ってくる。深く息吐くことでてなんとかしておさえ込んだ。
そうこうしている間に、少年の手が熱くなってきた。
じわじわと熱さが増し、驚いて手を放した。人間が発する熱さとは思えないかった。まるで、火に触れたようだ。
「何したの?」
「何したと思う?」
質問に質問を返され、少年を睨むと
「ぼくは熱を作れるんだ。どんな物だって熱くできる」
耳を疑うことを言った。
「何それ。そんな嘘みたいな話し……」
「信じられない?」
当たり前じゃん、と言おうと口を開いたが、少年にしてみたらキヨのほうが信じられない姿をしているんだろうなと考えた。おばさんの話しでは、人間にこんな姿をしているものはいないっていうし。翼があるのは鳥か天使か悪魔くらいで、天使と悪魔は空想の生き物で現実にはいないし、鳥とキヨの翼はよく似ているけど、人間の体を持つ鳥はいないんだ。
人間の体は確かに熱を作る。だったら、もしかしたら、少年のほうがまともなのかも。
嘘みたいなのはキヨのほうか。
「信じるも何も私が否定できないことじゃない。それでおばさんに何か?」
「うん。ちょっと頼みたいことがあるんだ」
「頼み?」
しまりのない顔をして、少年はにへっと笑った。