チョコレートシェイク
「お〜カナちゃん飲んどるかぁ?」

「主役がいなきゃ酔っ払えないー」

女の子は相変わらず櫂くんに絡んでいた。
あームカつく。
もう帰りたい…

私は俯いたままその場を離れた。

「ちょっと、沙里?!」
奈津美が慌てて追ってきた。

一刻も早く店を出たかった。
でも、浴衣を着ている所為で思うように早く歩けない上に人をかき分けて行かなきゃならず、入口が遠く感じた。

「あー浴衣だぁ〜気合い入ってるね〜」

小声で囁かれて笑われた。

ーーッツ

ムカつくのと、悔しいのと、惨めさと…
入り混じって泣きそうになった。

「沙里!」

背後で声がした。

それは奈津美ではなく櫂くんだった。

「沙里!」

…........................

店内が静まり返った。

櫂くんが名前を読んだ相手…
つまりは私に、みんなの視線が集まった。

「え?何?誰?」

ひそひそ声が聞こえる。

「どこ行くん?」

背後にいた櫂くんは、私の前に来て言った。

「………。」

「まだ居てくれなきゃ困るげんけど。」

櫂くんは、俯いたまま立っている私の顔を覗き込んだ。

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