王子様と甘い生活
「ごちそうさま」
そう言って、坂井くんが立ち上がった。
「なんだ彼方、もう良いのか?」
「うん、明日会議があって資料作りが終わってないから。」
坂井くんは食器を片付け、リビングの扉に手をかけた。
「あっ…千春さん」
急にお母さんの名前を呼び、坂井くんはお母さんに向き直った。
「今日から、よろしくお願いします。吉沢さんもこれから仲良くしてね。」
そう言って、にっこりとほほえむとリビングから出ていった。
にっ…二重人格!
「ほんと…素敵ねぇ」
そう言って、お母さんがほぅっとため息をつく。
いやいや、お母さんあれは絶対偽物だよ。
「それにしても…彼方兄ちゃんってほんと真面目だよね。」
そう言って、未来くんが私の腕に自分の腕を絡ませて、にこっと笑った。
「芽依ちゃんっていうかわいーい家族ができたのにさっ。明日もあるんだから一緒にご飯食べればいいのに!」
そっか…。
明日は日曜日なんだ。
どんな日曜日になるのか今からひやひやする…なんて言えないか。
「そういえば、芽依ちゃんは彼方と同じクラスなんだよね。仲は良いのかな?」
和人さんが聞いてきたけど…正直に『ほとんど話したことありません!』
なーんて、ちょっと言えないよね?
「まだ同じクラスになったばかりなので、たまに話すくらいです。」
「そうか、これから仲良くしてやってね。」
和人さんは優しくほほえんでくれたけど、私には仲良くなれる自信がなかった。