王子様と甘い生活
「ぐずっ…」
「まさか泣いてるの?」
「泣いてない…ずびっ」
「泣いてるじゃん。」
もう、ほっといてよぉ…何でいちいちつっこむの?
「別に、鍵無くしたくらいで落ち込まなくても良いんじゃない?」
さっきとは違って、坂井くんの優しげな声が渡り廊下に響いた。
「それに、もしなくても千春さんがいるんだし、家には入れるだろ。」
「それは…そうだけど。」
鍵をなくすって危ないし、怖いじゃない。
それに、あのチャームが気に入ってるからとは、坂井くんには言えなかった。
「まったく…何のためにわざわざ鈴付けて渡したんだか。」
「えっ…?」
坂井くんが私の後ろでぼそりと言った。
「やっぱり、あのチャーム坂井くんが付けてくれたの?」
振り返り、坂井くんの顔を見ると、何言ってるんだと驚いたような顔になった。
「はぁ…俺以外、誰が付けるの?」
「和人さん。」
「あり得ないね。」
ぷっと笑う。いやいや…坂井くんが付ける方が意外だよ。