王子様と甘い生活
坂井くんってば、一回も私においしいなんて言わないのに…前から思ってたけど、お母さんに優しいんだよなぁ。
「ごちそうさま、今日も定例会があるから先に行くよ。」
そう言って、坂井くんは立ち上がった。
あっ…そうだ。
私はあるものを持って、リビングから出た坂井くんを追い掛けた。
「坂井くん!」
「何?」
玄関で靴を履く坂井くんに、私は包みを差し出した。
「これ、昨日のお礼。」
「へっ?」
「お昼に、メロンパン3つはよくないと思うよ。」
「っ…!」
絶対作らないって決めていたお弁当。
でも、私にできることはこれくらいしかなかった。
「いってらっしゃい」
「………ありがと」
小さく聞こえた、ありがとの言葉。
坂井くんはお弁当を鞄にしまうと、振り返って扉にふれた。
坂井くんの耳が少し赤くて、自然に笑みがこぼれた。
ついてない日【end】