王子様と甘い生活
「吉沢さんはわかりやすすぎるんだよ。」
そう言って、坂井くんはさらに笑って教室に入っていった。
坂井くんの笑顔に、ドキッとした。
最近、坂井くんが笑うことが増えた気がする。
そしてそのたびに、ドキドキしてる自分に困惑した。
あんなに意地悪されて、ひどいことも言われたのに、なんでドキドキしてるんだろう。
私は悠真が好きなんじゃなかったっけ?
「芽依?」
「あっ、悠真。」
「なんだよ、顔赤らめちゃって。」
どこからか帰ってきた悠真がふっと、太陽みたいに笑う。
その笑顔を見てやっぱり安心した。
「なんでもないよ」
「そうか?もし好きな奴できたら俺にちゃんと言えよな!」
「やっ、やだよ!」
くくっと笑って、悠真が教室に入る。その後ろ姿を見つめて、ふと考えた。
中学生の頃、悠真を見るとドキドキした。話せることが、嬉しくて、キュンとした。
でも今は、安心する。
安心するこの気持ちは、好きとは違うの?
恋愛経験のほとんど無い私には、考えてもわからなかった。