先生~あなたに届くまで~

社会科準備室に入ると
机の上に7ページ分の資料が
置いてあった。

「これをまとめたらいいんですね。」

早速取りかかる私に

「ほんと頼もしいわ。
 よろしくお願いします!!」

と先生は笑った。



自分の何処が頼もしいのか
わからないまま

置かれたプリントを重ねて
ひたすらホッチキスでまとめ続けた。

ずっと話したいと思っていたのに
いざこんな場面になると
言葉は一つも出てこない。


「浅川さん?
 ちょっと休憩しませんか?」


ひたすら無言でまとめ続ける私に
パソコンに向かって仕事をしていた
先生がおかしそうに声をかけた。


「今日は手伝ってもらってるし
 特別に飲み物出すけどコーヒー飲める?」

コーヒーは嫌い。
あの苦いものを飲む意味がわからない。

けど子どもだと思われそうで
返事に悩むと


「ははぁん。
 その顔はコーヒーが苦手と見た。
 仕方ないな。紅茶を淹れてやろう!!」

と先生が言った。


「に、苦手じゃないですけど
 紅茶の方が有り難いです....。」

心を読まれた様で尻すぼみに返事をした。


先生はまたふっと笑って

「素直じゃないねぇ。」

と言いながら紅茶を淹れてくれた。


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