先生~あなたに届くまで~

遠くて近い


二度目になる先生の車の中は
凄く心地よい。

何の音楽も流れていない。
ただエンジンの音が聞こえるだけ。



「先生?」

私は静かに話しかけた。


「ん?どうした?」

先生は前を見たまま
笑顔で聞き返す。


「先生。私...。
 先生にお礼を言わなきゃいけない事が
 あるんです。」

私が少しためらいがちに言うと

「おぉ。
 浅川に礼を言われるなんて光栄だね。
 でも俺何かしたっけ?」

先生はまたふざける様に言った。


「光栄って...大げさですね!!
 でも光栄なことに感謝してるんです。」

私もふざけた様に笑いながら続けた。

「先生、私に素直になれって
 もっと他人に頼れって
 言ってくれましたよね?」

「ん?あー!!
 俺、そんな偉そうな事言ったな!!」

「そう!!その偉そうな言葉のおかげで
 私ずっと胸に閉じ込めてた事
 早絵と春菜に話せたんです。

 話したら凄くすっきりしちゃって...

 それに自分がどんだけ
 片意地張ってたのかわかったんです。

 だから先生には感謝してます。」


私は思い出したら嬉しくて
自然に笑顔になりながら話しをした。


「そうかぁ。
 偉そうな言葉も役に立てたなら
 俺も嬉しいよ。」

先生も柔らかくそう言って笑った。



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