先生~あなたに届くまで~

「ちょ、ちょ、ちょっと!!
 早絵!!」

ぽんっと押し出された廊下は
もう生徒もいなくて本当に静かだった。

私の声だけが響く。

教室の前を通り過ぎた先生が
こちらを振り返る。



き、気まずい。



「おう。浅川。
 まだ教室残ってたのか。」

先生はいつもの笑顔だ。

私が気まずいと思っていても
先生はいつも普通だから


私はいつも拍子抜け。

でもそれが今日は有り難い。



「早絵と勉強してました。」

「そっかそっか。
 今回も高得点狙い?」

先生は少しふざけた様に笑った。

「んぅ。手は抜きませんけど
 この前みたいに大事な約束はないから
 あんな高得点は狙いません。」

私の言葉を聞いて
一瞬驚いたような顔した後ふっと笑う。

「確かにあんな高得点は
 何度も見るもんじゃないな。
 それに大事な約束も果たしてないしな!!」

“大事な約束”を強調する様に
からかう先生に言い返したくて

「でも期末も頑張りますよ!!
 約束は...ゆっくり考えときます。
 先生が妥協出来る様なやつを。」

少し刺々しく笑いながらそう言った。

「妥協ね。
 うん。そういう願いで頼むわ!!

 じゃあ勉強頑張れよ。」

そう笑いながら手を振り歩きだした。



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