先生~あなたに届くまで~

歩いていく先生の背中を見つめる。


「先生!!」


話す事はもうない。
次の言葉は思い浮かばない。

だけど思わず呼び止めていた。


もう少し笑いかけていてほしい。

もう少し声を聞かせてほしい。


もう少し...もう少し...。


私はいつも“もう少し”と願う。



先生に会ってから
私は欲張りになった。



先生が振り返る。


「どうした?」


どうしよう...。

何を言う?


「あの...。」


本当は呼び止めただけなんて言えない。


「あの...。
 試験が終わったら
 紅茶飲みに行きたいです。

 早絵も春菜も誘うから...。

 駄目ですか?」


混乱した頭から出た言葉は
言いたかった...本音。


私はいつも一杯いっぱいになって
一人で墓穴を掘る。



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