先生~あなたに届くまで~

ノックしようと扉に手を伸ばす。


「早く入んな。」

先生の笑った声が聞こえた。


私が突っ立ったままだったから
先生が中から扉を開ける。


「声でかすぎて
 全部丸聞こえだから。」

先生は呆れた様に苦笑した。

「はははは」

私は空笑いした。

「んで小林のプリントを
 渡しに来てくれたんだっけ?」

「はい。
 何かすみません。」

「浅川が謝らなくていいよ。」


先生がにこっと笑ってくれるから
それだけで心は温かくなる。


「小林も無責任だな!!」

そう怒ったふりをする先生の優しさが
嬉しくて私はまた笑った。


「でも俺がここにいるの
 よくわかったな。」

「4時間目授業なかったはずだから
 ここで仕事してるかなって。」

言った後にはっとする。

自分のストーカーぶりを発揮してしまった。


ばっと下を向いたまま
頭をあげる事が出来ない。


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