先生~あなたに届くまで~

廊下に出ると
そこはいつもの静かな空間だった。

近づいても近づいても
先生の一言で
その距離なんてあっという間に
遠ざかって行く。


教室に戻ると
春菜はとびっきりの笑顔で私を迎えてくれた。

「先生と少しは話せた?」

そう小声で言う春菜に

「うん。ありがとう。」

そう伝えた。

私は日に日に深まる
先生への想いを
持て余している。

伝えても届かないからか。

伝えきれないくらい
思いが強くなったのか。

あの声も
たまに触れる手の温かさも
もっと感じていたい。

私は一人思いを巡らせながら
残りの時間を過ごした。
< 129 / 220 >

この作品をシェア

pagetop