先生~あなたに届くまで~

「浅川。
 お前最近良い顔する様になったな。」

先生は仕事を続けながら
突然そんな事を言う。

「良い顔ですか?
 自分では通常通りの顔のつもり
 なんですけどね...。

 でも悪い顔よりはいいので
 一応お礼言っておきますね!!」

何だか恥ずかしくて
冗談っぽくごまかした。


「はは。
 でもほんと安心したわ。
 
 たまに心ここに在らずっていうか
 悲しそうっていうか
 そんな目してたからさ。

 良かった、良かった。」

最後の方は独り言のように
先生は囁いた。


「先生?
 私ずっと自分はいらないんだと
 思ってきたんです。

 それに私のせいで犠牲になってる
 お母さんの迷惑にならない様に
 少しでも喜んでもらえる様に

 ずっとそう思ってきました。」


私は先生の方を見ずに話しを続ける。


「今もその気持ちが
 なくなったわけじゃないけど...
 
 先生が私の気持ちをちゃんと
 わかろうとしてくれてたから

 先生が私に必要な言葉をくれたから

 今は少し心が軽いんです。」

そう言って私は下を向いたまま微笑んだ。



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