先生~あなたに届くまで~
「先生。
私は...。」
「浅川。
俺は浅川が思ってくれてるほど
良い大人でも良い男でもないよ。
だから俺はやめとけ。
俺は浅川にとって
良い先生でいたい。」
先生はそう言って私を真っ直ぐ見た。
これ以上は何も言うなと。
私は生徒以外の何物でもないと。
そうはっきり伝えるように。
「浅川。
もう帰りなさい。」
そして先生はもう一度そう言った。
もう何も言えない。
言っちゃいけない。
「はい。」
私は先生から視線を逸らして
鞄をさっと取って扉に向かって歩いた。
「気をつけて帰れよ。」
振り向かなくてもわかる。
先生はいつもの優しい笑顔で笑っている。
「さようなら。」
私はそう言って部屋を出た。