先生~あなたに届くまで~

“良い人そうだな”とか

“この人モテるんだろうな”とか。

私は渡辺君の笑顔を見て
まるで他人事のように思っていた。

私があまりにも
ぼーっとしていたからか


「浅川さん、俺の事知ってる?」

そう言って渡辺君はもう一度微笑んだ。


どうしよう。

政治家じゃあるまいし
“記憶にございません”なんて
言えない。

答えに困っていると

「全然話した事ないもんね。
 これから知ってもらえると嬉しいよ。」

と渡辺君は言った。

「何かごめんね。
 私は浅川雪音です。」

私は申し訳なさと気まずさで
苦笑いをしながら無駄な自己紹介をした。

そんな私に渡辺君は優しく

「浅川さん。
 俺は浅川さん知ってるから。」

と笑ってくれた。

他の三人は私のアホさ加減に
少々呆れ気味で苦笑いしていた。


< 152 / 220 >

この作品をシェア

pagetop