先生~あなたに届くまで~
“良い人そうだな”とか
“この人モテるんだろうな”とか。
私は渡辺君の笑顔を見て
まるで他人事のように思っていた。
私があまりにも
ぼーっとしていたからか
「浅川さん、俺の事知ってる?」
そう言って渡辺君はもう一度微笑んだ。
どうしよう。
政治家じゃあるまいし
“記憶にございません”なんて
言えない。
答えに困っていると
「全然話した事ないもんね。
これから知ってもらえると嬉しいよ。」
と渡辺君は言った。
「何かごめんね。
私は浅川雪音です。」
私は申し訳なさと気まずさで
苦笑いをしながら無駄な自己紹介をした。
そんな私に渡辺君は優しく
「浅川さん。
俺は浅川さん知ってるから。」
と笑ってくれた。
他の三人は私のアホさ加減に
少々呆れ気味で苦笑いしていた。