先生~あなたに届くまで~

「じゃあ今日はそろそろ帰るか!!」

気づけば店に来てから3時間...。

何をそんなに話したのか
あまり記憶にない。
ほとんど健が話していたけど。


健の言葉を合図に店を出て
駅まで5人で歩いた。


私以外の4人は反対方向なので
駅で別れようとすると

「今日だけ俺に送らせて。」

渡辺君は頬笑みながらそう言った。

「私は大丈夫。
 反対方向だし...。」

私が断ろうとすると

「今日だけ送らせてほしいんだ。」

私の言葉にかぶせる様に
しっかりした口調でそう言った。


すると健が

「今日だけだし
 雪音一人じゃ危ないから
 送ってもらえって!!」

と強制的に私と渡辺君の背中を押して
改札口まで連れてきた。


そして春菜と早絵を引っ張って
颯爽と消えていったのだ。


「浅川さん。
 ごめんね。強制的になっちゃって。」

渡辺君は困った様に笑った。


「ううん。悪いの健だから。
 こっちこそごめんね。反対なのに。」

悪くないのに謝ってくれる渡辺君に
こっちが申し訳ない気持ちで
いっぱいになる。

「俺は一緒にいれて嬉しいから。」

渡辺君はそう言って優しく笑った。



優しく笑った顔が何となく
先生に似てるな。



私はそんな最低な事を思っていた。



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