先生~あなたに届くまで~
扉を出ると泣きそうになったけど
我慢した。
心を落ち着かせるように
私はゆっくり歩いた。
一階に下りて渡り廊下を歩いていると
「浅川さん?」
聞き覚えてのある声がした。
「渡辺君。」
そこには
ジャージ姿の渡辺君がいた。
「部活中じゃないの?」
「うん。
体力作りで
学校周り走ってきたとこ。」
「じゃあ止まっちゃ駄目なんじゃない?」
「うん。駄目だね。
浅川さんいると思ったら
つい足止めちゃって。」
私の言葉におどける様に言って
苦笑いをした。
それがおかしくて私もつい笑ってしまう。
渡辺君はそんな私を見て
柔らかく笑った。
「浅川さん。何かあったんでしょ?
好きな人のこと?」
渡辺君に突然そんな事を言われて
戸惑っていると
「やっぱり。
何となくそんな気がしたんだ。
俺でよかったら
いつでも話し聞くから。」
渡辺君が言葉を続けるから更に驚いて
「えっ...でも...。」
私は言葉が出てこない。
そんな私を見て渡辺君はふっと笑って
「昨日も言ったでしょ?
友達になろうって。
だから気軽に話してよ。」
そう言って私を見た。
渡辺君は凄い人だ。
私には真似できない。
そう思うとまた言葉が出なかった。