先生~あなたに届くまで~
ちょうど1カ月前のあの日。
優輝と初めて一緒に登校した日。
いつも探しても探してもいない車が
校門前の坂を通って行った。
まるで初めて会った日のように
私はその車の運転手と目が合った気がした。
その人はまるで
“それでいいんだ”と言わんばかりに
優しく微笑んだ。
あの日と同じように
まるで時間が止まったかのように
長い時間だった気がする。
告白した次の日に他の人と
一緒にいるなんて
軽い気持ちだと思われただろう。
“自業自得だ”
そう思うと情けなかった。
「“行きなよ”とは今日は言わないよ。」
申し訳なさそうに渡辺君は微笑んで
ぎゅっと手を握った。
「渡辺君....知ってたの?」
私は一瞬その手を解こうとしたけど
更に強まった手の力に
簡単にそれを諦めた。
「浅川さんの視線の先には
いつも伊原先生がいたからね...」
困ったように笑った。
そしてもう一度手をぎゅっと握る。
私はもう解こうともしなかった。
ただ優しさに温かさに逃げただけ。
自分でもそうわかってた。
だけど情けなくてもう考えたくなかった。