先生~あなたに届くまで~

教室に入ってきた先生は
昨日の告白も今日の朝のことも
何もなかったかのように
とびきりの笑顔で挨拶している。


そして
「おっ!浅川おはよ‼いい朝だな‼」
と昨日とは別人のように声をかけた。

「おはようございます。」
私は悔しくて笑顔で挨拶を返した。

ホームルームの時も
日本史の授業中も
真っ直ぐ先生を見た。

目を逸らしたり
不機嫌な顔をしたりすると
負けのような気がした。

ポーカーフェイスの上手い先生のように
私だって何もなかったかのような顔を
しないと悔しくて仕方なかった。


放課後、日誌を届けに準備室へ行くと
朝のような笑顔の先生がいた。

「浅川‼ご苦労さん‼気をつけてな‼」

日誌を受け取ると
先生は何も言わせないように
ニコッと笑った。

先生がいくら突き放しても
好きなのは先生だけだと言いたいのに
今の私が言っても...と思うと
言葉が出なかった。

先生は何か言いたそうに
立っている私に気がついたように
話し始める。

「謝らなくていいぞ。
お前に彼氏が出来るならお祝いしてやる‼

俺よりいい奴なんて
周りにたくさんいたろ?」

本気なのかわざと言っているのか
もうわからなかった。

ただどちらだとしても
心が裂けるように痛いのは確かだ。

そして瞳の奥が熱いのも確か...。

そう気づいた時には
涙が頬を伝っていった。




< 176 / 220 >

この作品をシェア

pagetop