先生~あなたに届くまで~
「よし!ホームルーム始めるぞ!
席つけー!」
先生の元気な声で我に返った。
皆もバラバラと席につき始める。
私も後ろの席に
向かって歩きだす。
一度だけ小さく後ろを振り返る…。
毎日見ているのに嫌いになったはずなのに
笑顔を見ると心は温かくなる。
“チャラくて嫌いだったくせに”
そう思うとふっと笑いが出た。
体を前に戻そうと思った瞬間
先生が私の方を見た。
そして…
安心したように優しく微笑んだ。
周りの椅子をひく音も
クラスメイトの笑い声も遠くに聞こえて…
私は先生から目が離せなかった。
まるで初めて先生と会った時のように…
時間が止まったみたいだった。
「席つけよ。」
笑いながら優しく言ったその声に
慌てて目を逸らす。
勢いよく体を戻すと早絵と目が合った。
早絵は少し私を見た後
無表情なまま視線をそらした。
“最低だよね…。”
早絵が怒るのは正しい。
もういいと言いながら心も身体も
言葉についていかない…。
“早絵ごめん。”
私はまた心の中で謝り
早絵から視線を離して自分の席に向かった。