先生~あなたに届くまで~
「ちゃんと話さなきゃと思ってたんだ。」
先生が真剣な顔でそう言うから
私は慌てて声を遮った。
「先生!もう本当にいいんです!
ちゃんとわかってるから。
それに!どうしたって先生は私にとって
“特別な先生”なの。
だから前みたいに...
普通に過ごせたらそれでいい。
その方がいいんです。」
私は先生を真っ直ぐ見た。
「ありがとな。
生徒に気を使わせるなんて教師失格だな。」
先生は申し訳なさそうに笑った。
「ほんとですよ!以後気をつけるように!」
私は大袈裟に言って笑った。
先生がまた驚いた顔をするから
私はぷっと吹き出した。
それを見て先生が笑う。
2人で顔を見合わせて笑い合った。
「ほんとありがとな。」
そう言って先生は近づいて来て頭を撫でた。
だから私はされるがまま頷いて
「資料取りに来たくらいでそんな感謝されても」
と先生を見上げた。
すると先生は「確かに!」と言いながら
頭をわしわし撫でた。
「あー髪ぐちゃぐちゃになった...」
先生を睨んでぷくっと頬を膨らます。
「これでも充分かわいいよ!
我らが学級委員長!」
さらにわしわしするから「やめてください!」
と笑いながら怒った。
最初からこうやって過ごせばよかった。
私さえ先生を先生として見れば
こんなに楽しく過ごせるんだ。
“やっぱりこれでよかった”
本当はここにくるまで悩んでいた。
避けてしまおうか、何事もなかったようにしようか
それともこうして笑い飛ばそうか。
今日の選択は成功だ。
これでよかった。