先生~あなたに届くまで~
「だけどね...。
いつも他人事のように周りを見てる自分が
時々嫌になる時もあって...。
素直になれない自分への苛立ちを
他人にぶつけてるような...
説明出来ないけど...
そんな思いにある時があってね...。
そんな時に渡辺君が
“進藤さんにはきっと静かで綺麗な世界が
見えてるんだろうね”って言ったのよ。
全く嫌味には聞こえなかった。
むしろ自分の見てる世界が
不思議と素敵なものにさえ感じられた。
おかしいでしょ。」
早絵はまた目を伏せて笑うけど
私達は初めて聞く早絵の思いに声が出なくて
ただ次の言葉を待った。
「自分の中のそんな乙女のような感情に
自分が一番驚いたの。
だけどその日から渡辺君は特別になった。
新しい世界を私に見せてくれたからかな。」
そう言って優しく笑う。
その顔を見ると、どれだけ優輝を好きか
嫌でも伝わってくる。
そしてそれと同時に今までどんな思いで
私と優輝を見ていたのだろうと思うと
胸が締め付けられた。
「驚いたでしょ?
雪音...
あんたが悪いって思う必要はないのよ。」
私の苦しそうな顔に
気づいた早絵は諭すようにそう言った。
「だけど...」
私の声に被せて早絵は続ける。