先生~あなたに届くまで~
頭を下げた私に早絵が近づく。
パンっと頬に痛みが走る。
「早絵..。」
私が早絵を見るとふっと笑った。
「これでスッキリした。
正直に言うと腹が立つこともあった。
ただ逃げ出す雪音を許せない時もあったの。」
思い出すように笑った。
「だけど逃げる気持ちもわかるから。
私も綺麗ごとを並べて
逃げてるようなものだから。
自分の想いを伝えられないのは
傷つきたくないからよ。
私はただ逃げてるの。
だから私のせいで渡辺君の想いを
拒んだりしないで。
今までのことは
さっきの一発でチャラよ。
だからちゃんと向き合ってあげて。
じゃなきゃ友達やめてやるから。」
そう言って早絵は笑った。
「早絵...だけど...」
私の声をかき消すかのように
「何度も言わせない。
これが私なりの愛し方よ。
真剣に向き合って好きになれなくても
責めたりしないから。
それに私と友達でいたいでしょ?
だからお願い。」
早絵は冗談っぽく言って笑う。
この人はなんて綺麗な顔で笑うのだろう。
どれだけ強くて素敵な人なんだろう。
ほんとに自分が嫌になる。
「早絵...。
ほんとにごめんね。
私...真剣に考えさせてもらうね。」
早絵を真っ直ぐ見てそう告げた。