先生~あなたに届くまで~
「そうだな。
渡辺はきっとお前を泣かせたりしないよ。
俺の大事な生徒を任せられる男だな。」
先生はうんうんと頷きながら
微笑んだ。
「お父さんみたいな言い方ですね。」
先生の言葉を受け流すように
早くこの話を終わらせたかった。
いくら先生を忘れて
優輝と向き合っていこうと言っても
先生が平気な顔で
私と優輝の話をするのは
まだ心が耐えられないと言っている。
私の言葉に「確かに」と言いながら
ふふっと笑っている先生に
「先生は何しに来たんですか?」
と話を切り替えした。
「あぁ!そうだった。
お前がいたから何しに来たか
忘れるとこだった。
明日のな授業の資料を
受け取りに来たんだよ。」
先生はおかしそうに笑いながら答えた。
「へえ。先生も大変なんですね。
どんな本ですか?」
「“先生も”って
お前にはどう見えてんのかねぇ。
本はな、平安時代の歌集だよ。
1年の時習ったろ?」
先生はわざとらしく
納得いかないって顔で
首をかしげながら質問に答えた。
その姿がおかしくて
私はつい笑ってしまう。