先生~あなたに届くまで~
「“愛しいあなたが 帰って来る日のために
死にそうなほどの苦しさに耐え
生きていきます 私を忘れないで。」
その詩を詠むと
遠い目をした先生を思い出して
胸が苦しくなった。
遠くの誰かを想って
詠ったこの詩が
まるで先生の想いのように
感じられた。
「みゆきさん...」
私は指輪を握りしめて眠っていた
先生を思い出した。
先生にとって大切な彼女(ひと)に
違いないその女性への想いを
痛いほど感じた。
先生にとっての忘れられない人。
思い出す日さえないほどに
いつも想っている人。
どんな人なんだろう。
どうして離れてしまったのだろう。
そんな想いが巡ったけど
すぐに打ち消した。
もう気にすることではない。
中途半端な私の想いは
先生の彼女を想う気持ちにも
早絵の優輝を想う気持ちにも
敵わないと思った。
私も相手の幸せを願うくらい
どれだけ離れても揺らぐことのないくらい
優輝を大切に想えるようになろう。
そう自分に言い聞かせた。