先生~あなたに届くまで~
「先生!」
私は廊下に飛び出して
小さく見える先生の背中を追った。
「先生!」
もう一度先生を呼ぶ。
小さな背中は振り向いて
こちらを見ている。
「先生。」
廊下に私の声が響く。
遠くで部活をする声や
楽器の音が響く。
私は少しだけ歩みを進め
先生との距離を縮めた。
「浅川?」
「先生。
私...先生が好きでした。
学校にいても夢の中でも
眠る前も起きてからも...
先生だけを想ってた。
先生だけが特別でした。
初めてだったの。
こんなに誰かを想ったのも
こんなに泣いたり怒ったり
笑ったり...全部初めてだったの。
きっとこれからも先生は
私にとって特別な人だけど...
今日でさよならにします。
先生として特別にしてみせるから。
先生。さようなら。」
私は泣きながら笑った。
先生を真っ直ぐ見つめたまま。
そして背を向けて来た道を戻り始める。
「浅川。」
私はその声に歩みを止める。
先生の足音が近づく。
「浅川。」
そう名前を呼び腕を引いて
私を振り向かせた。