先生~あなたに届くまで~
カーテンが閉まっている部屋は薄暗くて
カーテンの隙間から洩れる夕日が
1本、光の道を作っていた。
その光を辿ると
机にうつ伏せている人が見えた。
吸い寄せられるように
その人に近づく。
その人はチェーンに繋がった指輪を
指先で優しく握り眠っていた。
でもその顔はとても辛そうで
悪夢からすぐにでも覚まさせてあげたいと思った。
すっと肩に手を伸ばそうとした時
その人の頬がきらっと光った。
そっと顔を近づける。
悲しみや切なさが混じった表情の
頬には一筋の涙が零れていた。
薄暗い部屋で
夕日を浴びた涙はとても綺麗で
とても切なかった。
頬に手を伸ばしかけたけど
何だか触れてはいけない気がして
「せんせい?」
とそっと呼んでみた。
だけど私の声が響いただけで
返事はない。
「先生?」
悪夢から早く戻ってきてというように
少し声を張った。