先生~あなたに届くまで~
「ん...?美幸...?」
先生は目を薄ら開けて
私の手を掴んだ。
さっきまで悪夢から覚まさせてあげたいと
思っていたのに
先生の声があまりにも切なくて
掴んでいる手の力があまりにも弱くて...
声が出なかった。
それどころか自分が先生の呼ぶ“美幸さん”
だったらいいのに...とさえ思った。
しばらく掴まれたままの腕を
振りほどくことも出来なくて
ただ佇んでいた。
「先生...。」
小さく呼んだ声に先生は
ぱっと目を開け、掴んでいた腕を離した。
静かだった部屋はもっと静かに感じて
緊張感が張りつめた。
ただ驚いたまま
私を見る先生から目が離せなかった。