先生~あなたに届くまで~



「先生....日誌....。」

やっと出た言葉は
声の出し方を忘れたように掠れていた。

その言葉を聞いた先生は
驚いたままの顔をふっと微笑みに変える。




「どうして浅川が泣くの?」

先生はまるで子どもをあやす様に
優しくそう尋ねた。

私は尋ねられて初めて
自分が泣いている事に気づいた。

悲しいのか、寂しいのか、
理由はわからない。

ただ涙が流れていた。

そして胸のずっと奥の方が
締め付けられているみたいだった。


苦しくて言葉が出なくて
私は訳もわからず首を横に振る。


すると先生は、またふっと笑って

「浅川は優しいな」

と言い、私の頭を撫でた。


< 39 / 220 >

この作品をシェア

pagetop