先生~あなたに届くまで~
恥ずかしくて捲し立てる様に
早口で話し終えた。
沈黙が流れる。
“私何言ってんだろう”
恥ずかしくて下を向く。
エンジンの音だけが聞こえて
心臓がドクドク鳴る音が聞こえないかと
心配になった。
「浅川。ありがとな。」
今日2度目の言葉を聞いた。
でも返事が出来なくて
下を向いたまま頷いた。
先生はずるい。
いつもふざけているのに
大事な時には決まって真剣な声を出す。
それに私は何も言えなくなる。
それから、どちらも話し始めることなく
そのまま静かに車は走った。
先生が家までの道順を質問して
私が「はい」と答えるだけ...。
何の会話もない。
だけど。
初めて本音を先生に話したことで
私は少し先生に近づけた気がした。