先生~あなたに届くまで~
―先生side―
その日は美幸の命日だった。
墓参りにも行ってやれなくて
一人になりたかった俺は
社会科準備室にいた。
いつも付けているネックレスを握り
美幸に語りかける様に
写真の中の彼女を眺めていた。
普段ならあり得ないことなのに
俺はそのまま眠りについていた。
そこは真っ白で
俺の隣には美幸がいる。
それが嬉しくて
美幸が隣にいるだけで幸せで
俺は美幸の手を握る。
美幸は「なぁに?」と照れた様に笑い
俺の手を握り返す。
なのにぎゅっと握った手の感触は
さーっと砂の様に消えてしまう。
「美幸‼美幸‼」
俺が大声で叫ぶと
遠くに美幸の後ろ姿が見える。
「美幸‼行くな‼
俺をおいて行くなよ‼
美幸!!美幸!!」
声が枯れる程叫ぶけど
美幸の姿は小さくなって消えて行った。
これは夢か?現実か?
どちらでもいい。
美幸を返してくれ。
俺をここから救いだしてくれ。