先生~あなたに届くまで~
初めての約束
後藤さんの告白を聞いてから
2週間が過ぎた。
あの後、教室に戻ると
目の赤い私を2人は心配したけど
私は“階段で転んだ”と
見え透いた嘘をついた。
心配をかけたくないのは本当だったけど
何から話せばいいのか。
言葉にしても泣かずにいられるのか。
そして本当の事を話したら
2人はどんな顔をするのか。
色んな事を考えると話すことは出来なかった。
2人は『本当に?』と
何度も聞いてくれたけど
ごまかし続ける私に呆れたのか
それ以上は何も聞かなかった。
あの日から私の生活は
可もなく不可もない
以前までの生活に戻っていた。
ただ先生を
目で追うのをやめただけ。
ただ先生の声に
耳を澄ますのをやめただけ。
ただ先生の車を
探すのをやめただけ。
ただ先生の事を
考えるのをやめただけ。
“ただそれだけの事”
だから何ともない。
何ともないんだ。