先生~あなたに届くまで~
珍しくテンションの低い春菜が
「あーもう明日から試験だぁ。」
と私の机にうつ伏せて嘆いている。
「だからあれだけ
早く勉強始めなさいって言ったのに。」
と早絵は呆れ気味。
「もう。ママみたいな事言わないでー。
あー。雪音ぇ。勉強の神様ぁ!!
どうかヤマを教えてください!!
いや!!!
放課後に図書室で数学を教えてくれない?」
春菜が甘えた声で言うから
「いいよ。」
と私は笑顔で答えた。
早絵を見ると一瞬呆れた顔をしたけど
「私もちょっと聞きたいとこ
あったからお願いしてもいい?」
と珍しく春菜に賛成した。
こうして3人で放課後勉強会を
開く約束をした。
クラスでは席替えがあって
私は窓側の一番後ろの席になった。
この席は落ち着けるから好きだ。
そしてこの席からは
職員駐車場と社会科準備室が見える。
何度、その方向を見ようとして
止めたかはわからない。
“もう考えない”
そう何度自分に言い聞かせたかも
わからない。