先生~あなたに届くまで~
放課後になり3人で図書室に来た。
日誌は相変わらずしっかり書いている。
「気をつけて帰れよ。」と言われれば
「はい。」と返事をする。
ちゃんと普通に出来ている。
出来ているというより
今までと何も変わらないのだ。
少しだけつながっていると
思っていたものは
本当に些細すぎるもので
消えてしまっても
何も変わらなかった。
ただ私の心に小さな穴を
開けただけ。
だから先生の事を考えないと
そう決めた日から
今までと変わることは一つもない。
そう一つもない。
「.....
..雪音ぇ。」
また一人の世界に行っていた私は
春菜に呼ばれて現実に戻った。
「ん?何?」
「あのね、この問題なんだけど...。」
「これは等差数列の問題だから...」
私は筆箱からシャーペンを取り出す。
慌てて取ったから赤ペンも一緒に出てきた。
新しい赤ペンだ。
あの日返してもらうはずだった赤ペンは
先生が持っているのだろうか。
あの日の事を思い出しそうで
先生に赤ペンの事は一言も言っていない。