先生~あなたに届くまで~
なのに先生は微笑んだまま
私に話し始める。
「浅川、もったいないよ。」
先生の言葉の意味がわからず
私はただ先生を見つめた。
「俺さ赴任する前から職員室で
お前の話を聞いたことがあったんだ。
浅川って生徒は真面目で優秀で完璧で
もちろん先生に逆らったりしない。
まさに模範的な生徒だって。
だけど俺の見た浅川は違ってた。
確かに完璧だったし優秀だったよ。
けど浅川はよく笑うし怒るし
そしてよく泣いてた。」
先生はちょっと申し訳なさそうに
そして柔らかく笑った。
「俺の想像してた完璧な生徒とは
ちょっと違ってて驚いたんだ。
そんでちょっと嬉しかった。
浅川。
もっと素直になりなさい。
肩の力を抜きなさい。
そしてもっと人に頼りなさい。
お前の周りにいる人は
浅川が弱い所を見せても
きちんと受け止めてくれる人だと
俺は思うよ。
怖がらなくていい。
もっと甘えていいんだ。」
涙が溢れていた。
この人は
どうしていつも...
いつも...心を乱すのだろう。
どうして私の欲しい言葉を
知っているのだろう。