スマイリー
そのまま流れ出る言葉を押し留める術は、持ち合わせていなかった。



「1年のとき、藍さんとのことで部活のみんなに冷やかされて」



たった数十センチしか離れていないところにある、藍の顔をまっすぐ見た。藍の顔も、まっすぐ進を見ていた。



「何週間かしたらすぐそうゆうのは終わってみんな気にしなくなったけど、俺はずっと気にしてて」



だんだん早口になっていくのが自分でも分かった。頬が沸騰しそうなほど熱い。



「…ずっと?」



鈴のような透き通った声が尋ねた。



「うん、藍さんが引退してからも、卒業してからも」



もやもやしたまま進は3年になった。勉強には身が入らず、あっという間に成績は急降下した。



「自分の中で藍さんは、どんな位置づけだったのかちゃんと結論出す前に、藍さんいなくなっちゃったから」



「……」



困ったような笑顔を見せたまま、藍は何も言わず進の顔を眺めていた。



「…今日、俺がここに来させられたのは、それが関係してるような気がするんです」
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