スマイリー
藍は雑誌を拾うためにしゃがんだまま、同じ体勢の進を眺めていたが、そのままぺたん、と、コンクリートの冷たい地面に座りこんだ。



「未来の俺の気持ちは少し違うかもしれないけど、その、この時間の俺の気持ちは間違いない。藍さんが好きだった」



有華の影を脳裏にうっすら浮かべながらも、もう一度はっきりと言った。







進は藍が好きだった。







“弟のように”可愛がられるのが、苦痛だった。



藍に守られるのではなくて、藍の隣を歩きたかった。







藍の笑顔を独占したかった。







「…それが、進の出した結論?」



視線を落とし、コンクリートの床を見つめたまま、藍が震えるような小声で尋ねた。



「そう。あ、あの。ごめん、いきなり」



進は勢いよく立ち上がって、頭を下げた。



とたんに顔が赤く染まり、汗が吹き出してきた。頭からは今にも蒸気が上がってきそうだ。
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